生まれつき生理と排卵がない「原発性無月経」である徳瑠里香さんが、妊娠&出産したご自身の経験とともに、周りに居る様々な形の「家族」についてインタビューした、本書「それでも、母になる」。
自身の経験だけを綴ることもできたであろう徳さんが、あくまでも、沢山の多様な「家族の形」や「生き方」の中の「特別な普通の人生」の1つとして、自分の体験を語り、他者の体験談に耳をすませ、本書を構成しているところに、私はとても胸が熱くなりました。
本書で紹介されているのは、16歳で妊娠された方や、産まない選択をされた方、旦那さんと腎臓を半分こにして生きている方、養子縁組をされた方、養子として育った方、性転換され結婚された方などなど‥‥
そこには、表面的には語り尽くすことなんて決してできない、さまざまな人生の物語と、多様な家族の在り方、人との繋がり方の可能性が、断片的に、大切に、綴られていました。
また、所々に、同じような状況の方にも参考になると思われるような、具体的な情報がさりげなく差し込まれている部分からも、筆者の優しさが感じられました。
家族とは一体何か?
答えのない問いと、無限の可能性が広がってゆく、そんな優しい1冊でした。
”自分が見えている狭い世界の価値観と物差しだけで推し測って、自分を含めた誰かを傷つけない優しさと想像力を持ちたいと願う。でも、どれだけ意識しても、自分のなかの「普通」や「正しさ」が顔を出し、意図せず無意識に優しさの仮面を被せた言葉で誰かを傷つけてしまうことがある。ただ一方的に私の経験や未熟な考えを綴ってきたこの本もそうなってしまっているところがあるかもしれない。まだまだ私には無意識の偏見や固定観念があると思うし、優しさと想像力が足りない。”
”正しい親も、正しい家族も、きっそとんなものはない。”
”それでも私は、家族をつくっていく。
「正しい家族」ではなく、「わたしの家族」を。”
それでも、母になる: 生理のない私に子どもができて考えた家族のこと
▶ 決して同じ状況でなくても、共感できなくても、私もあなたも、一生懸命に自分の命を生きている者同士だということ。果たして、「私たち」を隔てているものとは、一体何なのか?
10年後、ともに会いに / 寺井 暁子
▶ ユナイテッド・ワールド・カレッジで出会った、世界各国出身のかつての同級生たちとの再会の旅について書かれた、寺井さんの作品。こちらも、私たちを隔てているものと、繋げているものについて、そして平和について考えたくなる一冊です。「10年後、ともに会いに」の私の感想はコチラより
小泉放談/小泉今日子
▶徳瑠さんの優しい視点は、小泉今日子さんの優しさにも似ているように感じられました。私の「小泉放談」の感想はコチラより
ドラマ「すいか」
▶それは、ドラマ「すいか」で描かれていた世界観とも繋がっている優しさだとも思います