ずっと読んでみたかった「コンビニ人間」。
村田沙耶香さんの「地球星人」もビックリポン!な1冊でしたが、今回のコンビニ人間もやっぱりビックリポン!な作品でした。
両作品共に根底に流れていたのは、作者自身のこの世界に対する激しいまでの「怒り」と「憤り」だと個人的には感じています。
「普通」や「世間」「常識」などといった一般的な「大多数派」と、そこから外れた「少数派」の強烈なまでのコントラスト表現は、やや大雑把な気もしますが、「こちら」と「あちら」に別れた相容れない世界と、その間にある目には見えない「壁」はそのまま「壁」として残りつつ、「少数派」に属する読者の存在を全肯定する書き方は、本当にパワフルで清々しいです。
物語を描いている村田さんの立ち位置は、決して「中立」ではありません。
自分が信じる所を貫き、大多数派の在り方を強く「おかしい」と意義を唱えています。
面白い。
でも、個人的には激しすぎて、痛かったです。
なぜならば、異なる世界観を持った者同士の間にある、その「壁」は、私たちの「外」にあるのではなく、私たちの「内」にあるのだから。
変わるべきなのは相手や世界だと叫べば叫ぶほど、遠のいてしまう何かがある気がするから。
それは「大多数派」から「少数派」へ言う場合も、「少数派」から「大多数派」へ言う場合も、結局は同じだと思うから。
「普通」とは普遍的なものではなく、その人が属する集団によって異なります。
自分の人生で出会った身近な何人かの平均を「普通」と私たちは呼んでいるそうですが、この物語の中で「普通」とされる内容もまた、作者である村田さんが生きている世界の中での「普通」なのだということ。
「世界」は沢山あるし、「普通」も沢山ある。
自分や何かを肯定する為に、相反する誰かと戦う必要なんてないと、改めてそんなことを考えました。
とはいえ、この本で救われる人はきっと世界中に沢山いると思います。
時を超えて長く広く読まれ続けるであろう、パワフルな1冊です。
コンビニ人間
▶ 短くてすぐに読めてしまいますが、忘れがたい1冊です。