前回、そして前々回に続いて、坂本真綾さん特集です(笑)出版時系列的には、こちらの「アイディ。」が真綾さんにとっての初エッセイだったそうですが、私にとっては1番最後に手に取ることとなりました。8歳からお仕事をお仕事と思わないままにキャリアをスタートさせた彼女がこれまで辿って来た道、アットホームな児童劇団での日々、悩み苦しんだ日々、学生時代、そして、エッセイ「from everywhere.」へと続く1人旅‥。繊細な感受性を通して語られるどのエピソードも等身大で飾らない表現で綴られていて、読み進めるたびに、まるで綺麗な空気を吸っているような、そんな清々しい気持ちになりました。
圧倒的な才能を持ちながらも、自信が持てずに悩みもがいていたという真綾さん。そこには、一生懸命に自分の命を輝かせたい、1人の人間の普遍的な姿がありました。彼女のこの誠実に生きる姿勢に、私を含めた多くの人達が惹かれる理由は、(真綾さん自身も以前語られていましたが)真綾さんを通して「自分自身」を見ているからなのだろうなと、改めて感じました。
「普通」であり「特別」である、ありのままの1人の人間の命の記録は美しく、読者に自分自身と出会う「鏡」や「地図」をプレゼントしてくれます。真綾さんの「アイディ。」は私にとって、そんな1冊でした。