日経新聞に載っていたレンタルなんもしない人さんのインタビュー内容が面白くて、なんて頭の良い切り口で活動してるんだ‥!と興味津々。本書は、そんなレンタルさんの”2018年6月のサービススタートから、2019年1月31日「スッキリ」(日本テレビ)出演まで、半年間におこった出来事をほぼ時系列で(だいたい)紹介するノンフィクション・エッセイ。”
活動開始から日々のツイッターを時系列に並べた本書。活動をリアルタイムで追っていなかった私にはとても有り難い内容。とにかく切り返し方が面白く、依頼主とのやり取りや描写、感想がユニークで、おもわずプっと笑ってしまいます。淡々とした冷静な態度に、頭の良さが随所随所で伝わって来ます。
「人のために」という崇高な目的をかり出したりもせず、自分の正義や価値観を啓蒙することもなく、決して感情論にもならず、また承認欲求なども強くなく、ただただ「なんもしないこと」の実験を楽しんでいる様子で、とにかく不思議なバランスのレンタルさん。「なにもしたくない」と一見後ろ向きな姿勢ですが、「嫌なものは嫌だ」とはっきりと言える根底にあるのは、ビックリするくらい安定した自己肯定感。プロニートだったphaさんや、ネガティブタレントとして活動してる栗原類さんにもどこか通じる感じがするのは私だけでしょうか‥
“Q 「なんかするんですね」
A 「なんもしない」は主観的なものです。”
「何もしない」ということを「している」ので、厳密に言えば「何もしていない」わけでは決してないのですが、彼が自分主体で動くのではなく、相手主体でただそこに存在することによって、多様な依頼主の存在が際立って浮き上がって来ます。普段街中でひっそりと秘められている人々の中にある多種多様な願いたちが、静かに昇華されてゆく様は感慨深いです。
”この「レンタルなんもしない人」という活動、「新手のヒモ」「新手の乞食」「単なる無職」など散々な言い表し方をされることが多くてよく気が沈むんですが、以前出たAmebaTVの番組で、ふかわりょうさんが「面白い船が集まる港」と表現してくれて、それを時々思い返すことで気を保ってるとこある。
「貯金ある」「家族が応援してる」といった条件をつけて「良し」とされることが多いので、あえて言いたいのですが、貯金がなく、家族が反対してても別にいいじゃないかという気持ちもあります。人類の営みをすべて「飯の種」と捉えなければ気がすまない思考回路っぽい人には「自分はライター業をやっていて、今は取材に集中している段階と言える。交通費や諸経費の負担なしにいろんな経験ができるんだから、取材のやり方としてうまいでしょ」みたいな説明してます。”
何かすることで自分の存在価値を証明しなくてはいけない、「生きること=何かすること」だという思い込みに対して、レンタルさんの活動は、人1人が存在する価値を静かに浮き彫りにしてゆきます。それは、レンタルさん自身の存在価値であると同時に、依頼主1人1人の存在価値でもあり、そして私たち1人1人の存在価値でもあります。つい最近、これまでの交通費と飲食代に加えて、1万円の料金が発生するとのこと。今回の料金改定で、依頼内容の種類が、変わるのかもしれませんね。遠くない未来にレンタルさんの書籍は海外でも翻訳されて、世界でも広く活動が知れ渡るような気が、勝手に致します。
レンタルなんもしない人のなんもしなかった話
▶読み初めたら何故かキングコングの西野さんのことが頭によぎったのですが、何と途中で西野さんはレンタルさんと同じ高校卒業&ハンド部の先輩だったと判明‥!
〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。: スペックゼロでお金と仕事と人間関係をめぐって考えたこと
▶スペックゼロではないと思う‥!
レンタルなんもしない人(1) (モーニング KC)
▶まさかまさかの漫画にまで‥!昨年始まったサービスなのにこノスピードは凄いですね‥
ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方
▶こちら京大の大学院卒の伊藤洋志さんが書いた「働き方/生き方」の書。レンタルさんも大阪大学院卒だそうですが、既存の生き方や働き方に疑問を持った高学歴の人たちの活動が面白いです
ニートの歩き方 ――お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法
▶作者phaさんも京大卒の元プロニートさん。他にも著書沢山です