本国ブラジルでは教科書にも作品が載っているという世界的にも有名な作家パウロ・コエーリョ氏。以前読んだ彼の「アルケミスト」や「ピエドラ川のほとりで私は泣いた」が大好きだったので、マーマーマガジンのセックス特集で彼の「11分間」が紹介されていたのを見つけたときには、迷わず読んでみたい!と思いました。
本作は娼婦となった主人公マリーアの人生における愛と性の物語なのですが、彼女が幼少期や思春期に経験した愛や性の体験が、その後の人生のさまざまな選択に大きく影響を与えていく様子や、なぜ娼婦になり、どんな風に自分を律しながら日々を過ごしているのか、その時々の彼女の心理描写がとても丁寧に描かれているので、同じような経験をしていない読者も、普遍的な1人の人間としての葛藤、孤独、渇望などに、親近感を抱きやすい内容となっていると思います。途中何度も出てくるマリーアの日記の内容や、娼婦として働きながら気付く発見、人々と交わすウィットにとんだ会話の仕方からにじみ出てくる、彼女の知性も個人的に素敵だなと感じました。様々な出会いや経験を通して、1つ1つ過去を許したり自分を開放し変わってゆくマリーアの様子から、人は「何処で何を経験するのか」よりも、その経験から「何を学ぶのか」のほうが重要なのだということが伝わってくるようでした。
正しさや間違いもなく、また正義も悪もない世界の中で描かれた、人生の「光」の部分や、セックスが持つ「聖なる部分」はとても美しく、決して読者を裏切らない物語の結末は、読者の気分を最高の場所へと連れて行ってくれます。更に本編を読み終わった後に、あとがきに書かれている本書制作の経緯や背景などを知ると、更にストーリーに奥行きが出て満足感がアップします。さすがパウロ氏、読者がどうすれば喜ぶのかをちゃんと知っています!