約20年前に読んだ「チグリスとユーフラテス」というSF小説が面白かったことを、ふと先日思い出しました。新井素子さんの作品はそれ以外は読んだことがなかったので、他にはどんな作品を書いている方なのかな‥??と、気になって、今回こちらの本「ひとめあなたに…」を手にとってみました。
ストーリーは、隕石によって地球が滅びる前の、最後の1週間のお話。世界の滅亡が1週間後に迫っていると知った人々は、様々な選択をしてゆく‥。色んな形で人々が狂ってゆく姿は多様で、「生きる意味とは?」という疑問を、彼らの姿とともに考えさせられます。
新井さんの独特な会話口調で書かれた文章スタイルは、「チグリスとユーフラテス」の頃と変わらず、読者層を大きく選んでしまうかもしれませんが、軽妙な文章のリズムには、一気に読ませてしまうパワーがあります。少女漫画的な描写も少なからず入っているので、一見するとライトノベルのような括りにされてしまいそうですが、そこに描かれている内容は普遍的で骨太な私たちの生に対する問いと、冷静な眼差し。あとがきを読んでビックリしてしまったのは、この作品が書かれたのは、新井さんが二十歳の時だったという事実です。高校生で作家デビューされたそうですが、いやはや、底知れぬ才能です。他の作品も益々読んでみたくなりました‥!
ひとめあなたに… (創元SF文庫)-新井素子
▶色んな狂った人たちが出て来たり、世界は滅亡するのですが、生を肯定的に捉えたストーリーなので読後感のよい作品です。
チグリスとユーフラテス上下-新井素子
▶こちらも惑星滅亡系ですが、「ひとめあなたに…」から14年後に書かれた作品なので、ラストシーンは一歩先をゆく描写です!
メランコリア
▶恐ろしいほどキワキワの美しい映像美と音楽で描かれた地球滅亡のお話で、一見すると「ひとめあなたに…」とストーリーが似ていますが、監督の意図通りに希望のストーリーと取るか、はたまた絶望のストーリーと取るかは、意見がパックリと割れる衝撃作品です!