大好きなドラマ「すいか」の原作も書いている、大人気ご夫婦脚本家ユニット木皿泉さんの小説「さざなみのよる」。元々は、数年前にNHKで放送された『富士ファミリー』というドラマの登場人物の1人、ナスミを主人公にしたストーリーが、短編形式で描かれているとのこと。今回うかつにも、私はこのドラマのことを全く知らずに読んでしまいましたが、そこはさすが木皿さん。独立したものとして全く問題無く楽しむことができました。
若くして癌で亡くなった女性ナスミの人生の断片が、本人と、周囲の人たちの視点で語られているのですが、人1人がこの世に存在することの大きさと、命が巡り続けてゆく自然の流れが、大切に描かれていました。何かを成し遂げなくても、何かを残さなくても、何者かにならなくても、お金持ちにならなくても、ただただ、あなたがここに存在していることや、ありふれた日常の風景が、どれだけ儚く、そして愛おしいものなのか。心に優しく染み込むように、温かい言葉たちが沢山沢山、ちりばめられています。木皿さんの作品はいつも、自分自身のことや、周囲の人たちのこと、当たり前の日常生活を、より愛おしく感じさせてくれる優しい魔法を持っています。
ところで、この小説にはところどころスピリチュアルな表現が出て来くるので、「あれれ??」(喜)と思っていたのですが、どうやらドラマ『富士ファミリー』では、ナスミは死後成仏出来ずに幽霊としてこの世に残っている、という設定だそうです。(しかも、小泉今日子さん!)
なるほど、これはドラマも見なくては‥!
さざなみのよる / 木皿泉
▶平凡でありふれた生活の一瞬一瞬が、命の重なりをつくっているということ。心をキュー!っと抱きしめてくれる1冊です
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