西国分寺にある素敵なカフェ・クルミドコーヒーから生まれた出版社クルミド出版をご存知でしょうか。なんと、カフェで執筆をされていたお客さんとの会話から生まれた出版社さんだそうで、カフェ同様、とても素敵なコンセプトなんです。
もしどこか遠いところで
自分の愛する人と小さく暮らすとなったとき
自分はいったい何を、バッグに入れるだろうか。厳選に厳選を重ねたその荷物
最後にそこに、1冊の本。やせられたり、お金が貯まるようになったり
仕事の能率が上がったり
……は期待できない、その本は
その存在自体が愛おしく
おそらくすでに、自分の一部ですらある。そんなことがあり得るとしたら
それはいったい、どんな本だろう。それはきっと、生きた本。
そこに人が生きている本。
一生懸命に、人が生きようとしている本。どんなに優れた技術や哲学をもってしても
そこに人の「存在」なくして、最後は人をいやせない。
そこに人の「存在」なくして、最後は人を鼓舞できない。それを「宝物」と
感じてもらえる心との出会いを祈って。クルミド出版、はじめます。
そんな出版社から発売された本「草原からの手紙」。
穏やかに進む者は安全に進む
安全に進む者は遠くまで行く
「ともに日々を丁寧に生きていきたい大切な人たちがいるのに、
旅に出るのはなぜだろう。
思えばエジプトでエゼキエルというマサイの長老と出会ったのは、もう1年以上前のことでした──」土と草で覆われるマサイの大地を歩く6日間。
その道はかつて130年前、
一人のスコットランド人が歩いた道だった。空間と時間を超えて届く、草原からの手紙。
読み終わるあなたの胸に去来するのは、愛する人への想い?、それとも冒険心?
作者の寺井暁子さんが、旦那さんと暮らす日本を遠く離れて、取材の旅の為マサイへ。その旅の間に綴られる旦那さんへの手紙が1冊の本となっています。どうして人は旅をするのか?彼女自身のとてもプライベートな問いと経験、そして彼女の眼を通して語られる、時空を超えたマサイの地を旅する人々との出会いが、不思議と重なり、そこには眼には見えない美しい織物が立ち上がってくるようでした。
この本はカフェで(残念ながらクルミドコーヒーではなかったのですが)一気に読んでしまったのですが、読み終わった後の幸福感は、なんとも形容しがたく、温かいものがじんわりと胸に広がってゆくのが感じられました。今まさに自分の「人生」という旅をしている途中であることが、とてもいとおしく感じられ、私の日常はとても不思議な魔法に包まれたようでした。
細部にまでこだわって作られた装丁も、出版社の成り立ちから、1冊の本が作られる過程までが美しく、他の大量生産の本からは得られない、特別な経験を与えてくれる本でした。手元にずっと取っておきたくなる、また大切な誰かにもプレゼントしたくなるような、特別な1冊です。(購入はクルミド出版より可能です)