最近ひょんなことから知ったSEKAI NO OWARIの音楽。食わず嫌いだったのが、一気に彼らの音楽が持つ独特な魅力に惹かれてしまい、彼らのことがもっと知りたい!と今回手に取ったのが、メンバーのSaoriさんが本名藤崎彩織さん名義で書いた小説「ふたご」。実体験をベースに書かれた小説であると言われている本書の内容は、ヴォーカルのFukase さんとSaoriさんのこと??と想像せずにはいられない内容なのが、セカオワルートから入った読者としてはたまりません。初作品とは思えない程上手な文章でとても読みやすく、一気に読んでしまいました。
この物語に出てくる主人公夏子と月島の二人の関係性は、俗にいう、好きだ恍れた、愛してる、つき合おう、別れよう、という若いカップルの恋愛のお話ではなく、多感な時期に出会った感受性豊かで繊細な2人が、プラトニックなまま境界線が危うくなるほど、互いの存在が自分の命のように繋がってしまった後、この世界で互いを生かし合いながら、一緒に生き続ける方法を、摸索していく愛の物語のように感じました。既存の社会的関係性の名前が付けられない特別な2人の関係性。周囲の人達の眼には理解しがたく、時には奇妙にさえ見える関係性。(本書の感想を検索したら、何故「ふたご」なのか理解できないという感想も多くて、びっくり!)お互い大切なのに、あまりにも大切すぎて大切にする方法が分からず、時に深く傷つけ合い、一緒にいることさえ苦しくなってしまう。自分達でもどうしたらいいのか分からない程離れがたく、魂が結びついてしまった関係性。
本作に書かれた内容すべてが本当にあったエピソードかどうかは永遠に秘密だとは思いますが、「実話をベースにした小説」として、わざと読者に「これって全部本当にあった話かな?」と興味をそそらせたり、想像を楽しませるエンターテイメント作品だと感じました。最終的にSEKAI NO OWARIのファンタジーへと回帰して行く装置として機能している、面白い小説です。
世の中の「普通」というレッテルに収まらない2人の関係性が、その後どのようにこの世界で生き抜いてゆくのか。いつか何十年も先に、この「ふたご」の続きのストーリーが読めたらいいなぁ、とそっと期待してしまいました。