小さい頃から慣れ親しんできたジブリ作品たち。特に「となりのトトロ」は日本の豊かな自然が描かれていて、幼い頃は地方へ行く度に「まるで、トトロの世界だ!」と思っていた記憶が懐かしく思い出されます。「もののけ姫」は、屋久島や白神山地がモデルとなっている、というのは有名なお話。きっとトトロも、どこかの地方に広がる田園風景がモデルになっているのだろう!と勝手に想像していました。それが、まさかまさかの、所沢で作られていたなんて‥!
トトロ誕生の秘話として、宮崎駿監督のインタビューや初期のトトロのスケッチ、そして鈴木敏夫プロデューサーが案内する「トトロが生まれた森」八国山も載っていますが、この本のメインは、宮崎監督の奥様・宮崎朱美さんが描いた草木のスケッチ日記でした。宮崎監督が守りたい景色として、トトロの舞台となった場所を紹介する、という趣旨ではある本書ですが、それとは別に、宮崎駿監督を影で支え続けていた元アニメーターでもある奥様の宮崎朱美さんという、もう1人のトトロの作者にスポットが当てられているのがとても印象的でした。
宮崎監督がインタビューで語られていたのですが、トトロで描かれている景色は、既に完成されている完璧な風景を切り抜いて描いたわけではなく、気に入った部分だけを切り取り集め、不要な風景(家とか)は頭の中で消して再構築していった、という制作秘話が個人的にはとても面白かったです。本当に、美しいものを創造するために必要なことは、「何処に居るのか」ではないのだと、美は何処にいても「見出されるもの」なのだということ。創造力の限りない可能性について触れられた気がしました。