今回初めて読んだ韓国の小説「82年生まれ、キム・ジヨン」。フェミニスト小説だと知らずに手にとったのですが、韓国ではベストセラー、世界各国でも翻訳刊行されている話題の1冊だそうです。
1人の女性の病院のカルテを淡々と読み上げる手法で描かれた本書は、静かに、主人公キム・ジヨン氏がこれまでの人生で経験して来た、数々の性差別体験を明らかにしてゆきます。読みながら、お国は違えど同じ女性として、「ああ、私も似たような経験があるな」と感じることもしばしばでした。日常生活に潜む何気ないやりとりや習慣の中にも、根深くある性差別文化。その時は嫌だなと感じたり、これはおかしいなと感じていても、何となく言えなかったり、状況や雰囲気が許されず、うやむやになってきた性差別体験にも、作者はキム・ジヨン氏というキャラクターを使って冷静に言語化し、「それは、おかしいと言っていいのですよ」と、そっと優しく伝えてくれています。
本書は、医師が患者のカルテを書くスタイルで描かれていますが、処方箋は書かれていません。誰かを批判することも解決することもなく、ただただ、淡々と、そこに根深くある性差が描かれています。
これは性別の問題だけに限ったことではないと思うのですが、長い歴史と文化に深く根付いているあらゆる「差別」という名の「ものの認識の仕方」は、決して「誰か」や「何か」だけが、全ての責任をとれるわけではないのだろうと思うのです。この女性差別問題にしても、一概に、男性だけが「加害者」だとは言い切れないのではないかな、と、私はどうしても感じてしまいます。女性も男性も、ある意味では、プログラムされた歴史的記憶の犠牲者でもあるのかもしれません。
本書は、私たち1人1人の中にある、無意識に帰属する社会の中で刷り込まれてきた「性別」に対する歴史的な記憶を指摘し、読者の性別がどちらであれ、私たち自身がそれらを自ら手放すことができることを、静かに示唆してくれているようでした。
82年生まれ、キム・ジヨン
▶ 韓国の歴史や文化も知れて、とても興味深い1冊でした
折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー
▶ 初めて英語圏に紹介された現代中国のSF短編集。こちらも同じ時代に中国で生きている人々の命が感じられて、とてもとても興味深かった1冊です。もっとアジア圏の作品が読みたくなります
ホ・オポノポノジャーニー ほんとうの自分を生きる旅
▶本書を読んでいて思い出したのは、ハワイの秘法ホ・オポノポノ。それぞれが自分の記憶を1つ1つクリーニングしていき、1人1人が自らの心に平安を見出せたら‥。ホ・オポノポノについては、この平良アイリーンさんの本とともに、ヒューレン博士やKR女史と、ウニヒピリを合わせて読むのが個人的にはオススメです◎